【インタビュー】WOODPRO 中本敬章さん・レインボー倉庫広島ヤスムラミチヨシさん 前編 | 「杉」がある豊かな暮らし、そんな未来を目指して

広島と聞いて何を思い浮かべますか?広島風お好み焼き、原爆ドーム、厳島神社、いろいろありますよね。私の場合はどうしたって「WOODPRO」、それから「レインボー倉庫広島」が頭に浮かぶんです。以前より行きたい、むしろ行かなければならないという責務に近い思いがあった中、ついに訪れることができました。
「WOODPRO」は、主に「杉の足場板」の販売等をされている会社。内装や家具の素材として、また過去のイベント等での会場資材等々、日頃から利用させていただいております。「レインボー倉庫広島」は、2011年の神奈川県磯子でのスタートを皮切りに、都内でも展開されているクリエイティブなシェアスペースと言いましょうか。今年5月に広島にもオープンしました。今回は WOODPRO の社長中本敬章さんとレインボー倉庫広島の運営を担うヤスムラミチヨシさんにお話を伺いました。(※ヤスムラさんは後編からのご登場です!)

<プロフィール> 中本敬章(なかもとひろあき) 株式会社WOODPRO代表取締役社長。杉足場板の伝道師。1958年広島生まれ。大学を卒業後、同族経営の建材メーカーに就職。営業・商品開発に携わる。1997年、父親が立ち上げたWOODPROに移籍するも、天災で経営危機に陥り、事業縮小を余儀なくされ、数年は事業の再構築に費やす。2000年よりネット通販店をオープンし各種オリジナル商品を展開、2011年より地元広島に実店舗「WOODPRO Shop & Cafe」、2015年にDIY専門店「WOODPRO BASE」をオープン。2017年地元クリエイターとつながる場として「RAINBOW SOKO HIROSHIMA」をオープン、新たな情報発信基地として連日賑わいをみせている。 「WOODPRO Shop & Café」: http://woodpro-shop.com/ ヤスムラミチヨシ レインボー倉庫広島、エトセトラキャラバン運営。1984年広島生まれ。高校時代から東京のファッション専門学校が企画するサマースクールに参加するなど、ファッションの夢を叶えるべく行動するも家庭の事情により進学を断念。その後、アパレル会社のグローバルワークに就職し、四国の各店と東京本社に勤務。東日本震災後、地元広島に帰郷し、現在グランピングの企画やシェアスペースの運営等を行っている。 「レインボー倉庫広島」: https://www.rainbowsoko-hiroshima.com/
広大なウッドプロの工場をご案内いただく。見渡す限りの杉足場板
-中本さん、杉の足場板、設計事務所でもある私たちもよく使わせていただきますが、元々は先代の会社を継がれてのスタートだったそうですね? 中本敬章さん(以下、中本):そうです。ここを継ぐ前、名前が似ているのですがウッドワンという会社で長らく営業として働いていました。ウッドワンの当時の社長にはとてもよくしてもらっていたのですが、社長の代替わりと、こちらも親の会社が代替わりのタイミング、それに自分でもやりたいことがあって、会社を継ぐことにしました。ウッドワンの先代からは「仕組みを作ること」を徹底的に教えられまして、自分の経営スタイルの基本は、ウッドワンから受け継いだものだったりします。 -継がれてのスタートは序盤から順調にいったのですか? 中本:これが大変なことがありまして。移籍して、たった2週間で天災、台風の直撃に主力工場が遭ってしまい1.8m水没、壊滅的状態です。本当にいきなりメイン事業を継続するか否かの判断の必要を迫られることになりました。数億の被害です。一時は被害額に対して、さらに同じくらいの借金をし、社員を雇用し続けることも考えましたが、そこまですると会社や社員に迷惑をかけるレベルから、下手をすると今度は社会に迷惑をかけることになりかねないと、もうこれは苦渋の決断の末、工場を閉じることに決めました。そこからは辞めていただく社員の再就職手配など、大変なスタートでした。台風は1997年9月の出来事でして、その年の11月末には山一證券が廃業するなど、世間的にも酷い状況でしたね。まぁ基本的に私は悲壮感のない人間ではあるので、常に気持ちは前を向いてはいましたが…。 -2週間で…。いきなりの波乱万丈ですが、そこからどう巻き返しを図られたのですか。 中本:それはもう地道に足場リースの営業からです。元々ゼネコン、工務店がそれぞれ自社で足場を抱えていたところから、現場の規模や工程に合せてリースをする時代に、そっちの方が効率的なのです。もちろん金属製の足場リースが業界の主流です。杉の足場板はカテゴリーとしてゼネコンや工務店での扱いは「その他」、つまり完全にイレギュラーな扱い。そうすると、そこを主眼に営業をかける会社は日本中でもうちくらいしかいないのです。結果、そのイレギュラーを逆手にとって、全国へ展開を拡大することができました。 -杉足場のリース事業に次いで、さらに現場で使い終わった足場板を販売する事業も始められたということですか。ダブルで画期的な発想があったのですね。 中本:思いつきというよりはそこに至る経緯がありました。本来の「足場」としては使えなくなった足場板はそれまでやり場がなく燃やして処分するしかありませんでした。それじゃあいかんぞと、2000年くらいに現WOODPROネットショップの店長である栗栖と2人で、削って、加工して、塗装して、まずはプランターをつくってみたのが最初です。例の水没した工場から救い出した機械を使って加工したんですよ。
家具製作など加工を行う工場内部。清掃が徹底されている
-これまでの足場板リースとは、全く別種の商品ですよね。どうやって展開させていったのですか。 中本:これも、いろいろとタイミングが重なりました。まず1999年に楽天の三木谷さんとお会いして3ヶ月後にネット販売を開始しました。その時は楽天もまだ1000店舗目くらいだったはずです(現在は4万店舗以上)。あの時期に始めた人たちは、全く別業種でも「同志」って感じで、実は今でも仲が良いのですよ。それと広島で「ハンドミーダウン」という内装デザイン等をやられている木下さんという方がいらっしゃいます。彼が当時ちょくちょくアメ車で来社されて、古い足場板を買って帰って、それでオリジナルの家具や店舗の内装などに使っていただいたことが、素材としての足場板の魅力に気づくきっかけになったことも大きいです。 -ネット販売だけでなく、中本さんご自身も東京や全国のイベントに積極的に参加されていますが、それもこの時期あたりからですか。 中本:2003年に新宿オゾンのDIY展に出展したのがきっかけで、そこから東京デザイナーズウィークで何度か、最近はアッシュ・ペー・フランスが主催する「場と間」に毎年出展しています。ハンドミーダウンの木下さんと同じく、クリエイティブな人たちのリアルな声を聞くのが大事だという考えで出展しています。
2017年「場と間」出展ブースの様子
-エンジョイワークスが2015年に行った「葉山小屋ヴィレッジ」にも、足場板をご提供いただきましたね。https://enjoyworksdesign.jp/project/3中本:同じ考えでご協力しました。足場板の可能性を多くのクリエイティブな方々に探っていただくことを大事にしています。会社としてこの先続けていこうと考えた時に10年先の未来がどうなっているか、それを発見するには、遠回りのようで必要なことだと考えています。
葉山小屋ヴィレッジはウッドプロの資材を全面的に活用した
-なるほど。実は経営においても核になる部分だったのですね。 中本:はい大事ですね。それと会社としての仕組みづくりも重視しています。自分たちはあくまで「メーカー」であることが軸にあって、例えば、単純に注文に対して追っ付けで対応していくことが是ではなかったりします。流通業だったら売れれば売れるほど儲かるのですが、メーカーというのは計画生産・計画販売がきっちりできることが一番コストパフォーマンスは良い、結果、うちの工場は残業なしで5時にスタッフは帰れるし、60歳以上のおじいちゃんたちが工場スタッフの半分近くを占め、日々頑張っていただいています。
おじいちゃん社員の丁寧な手仕事に支えられている
-ウッドプロさんは杉の足場板を建設業界の現場サイドと一般の方も利活用できる素材や家具等の両面でうまくリユースする仕組みをつくっていること、改めて認識することができましたが、さらにもっと深いところまで、仕組み化できていることに驚きました。 中本:足場板のリユースは、現在1/3の法則で運用できています。まず供給できる足場板の状態を管理するとともに、1/3は「家具」につくり直す、1/3は「素材」として提供、そして1/3は今でも前職のウッドワンに「木質バイオマス燃料」として利用してもらっています。この最後の1/3がマグロで言うところのアラみたいなものなのですが、本当はもっと材として使い倒すべきだと考えています。実はレインボー倉庫広島で「廃材をおもしろくする会」(後編参照)をスタートさせたのは、この部分の仕組み化のための取組みなのです。 -杉を素材として、最後の最後まで使い尽くす感じですね。 中本:はい。2000年に「WOODPRO」というブランド(=ネットショップの店名)を考え、その時は「木」のプロになろうと考えていましたが、今は「杉」一本でいこうと決めました。どの地域の裏山にもある杉を使って日本を元気にすることが目標、日本は杉があるから豊かな暮らしができるんだ、そういった未来を目指したいですね。
味わいの出た足場板がまるで次に活かされる場を待っているかのよう
>インタビュー後編へつづく

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